研究概要 |
川崎病後遠隔期の冠動脈病変において血管内皮由来の一酸化窒素(NO)産生が減弱していること、およびそれらの内皮機能障害と血管内超音波法により得られた組織像は、動脈硬化像に類似していることを証明し報告した(Iemura M, Ishii M, Kato H et al.Heart;2000.)。川崎病急牲期の血管リモデリングと細胞接着分子の関係を検討した。細胞接着分子であるP-, E-, L-セレクチンは、川崎病急性期および亜急性期には、慢性期および対照群に比して明らかに上昇しており、また、冠状動脈瘤を生じた例では生じなかった例に比して有意に上昇しており冠動脈瘤発生の予測因子となることが示唆された(Furui J Kurume Med J 2000)。急性期の治療と血管リモデリングの関係を検討した。γグロブリン治療の約13%に不応例が生じる。これらの症例では高頻度に冠状動脈後遺症を生じるが、有効な再治療法は確立されていない。γグロブリン治療抵抗性の川崎病に対して再治療法としてγグロブリン追加療法およびステロイドパルス治療の有効性を検討した。冠状動脈病変の発生頻度には両治療法・に有意な差を認めなかったがステロイド治療中に冠状動脈の一過性の拡張を生じた。今後、ステロイドが血管リモデリングへ及ぼす影響および投与時期などさらなる検討が必要である(Hashino K, Ishii M, et al. Pediatr Int 2001)。血管新生促進因子であるVascular endothlial growth factor(VEGF)の川崎病急性期の血行動態を検討した。冠状動脈瘤が形成される症例では有意に高値を示した。この事により川崎病血管障害およびリモデリングにおいてその病態へVEGFが関与している可能性が示唆される。この結果は米国心臓病学会に発表予定した。現在、論文を投稿中である(Furui J、Ishii M, Eto G, et al. Acta Paediatr,投稿中)。血管リモデリングの結果狭窄病変へ進行した症例に対するカテーテル治療の有効性を検討し治療指針を作った(Ishii M, et al. Pediatr Int 2001)。また、心筋内微小循環と血管リモデリングの関係を心筋コントラストエコー法を用いて証明した(Ishii M, et al. Pediatr Cardiol 2002)。
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