<研究目的> 多くの先天代謝疾患の根治療法には、遺伝子治療が母も理想的であり、その開発が非常に期待されている。遺伝子治療の臨床応用を妨げている最大の原因は、既存のベクターでは先天代謝疾患の治療に必要な、高率な遺伝子導入と長期の遺伝子発現という両者を満たすことができないからである。本研究では、アデノ・レトロ・キメラウイルスベクターと細胞性免疫の誘導が起こらないガットレス・アデノウイルスベクターという二つの新しいベクターの開発に取り組み、具体的に臨床応用を目指して、これらのベクターを用いた肝遺伝子導入法を開発することを研究目的とする。 <研究実績の概要> 1.アデノ・レトロ・キメラウイルスベクターを開発し、機能解析をおこなった。 2.ガットレスアデノウイルスベクターを開発し、その特性を解析し、条件の最適化を行った。 3.本研究で重要に関連する、肝再生誘導、肝細胞死について研究を進めた。特に、HGF(肝細胞増殖因子)、HB-EGF(ヘパリン結合型増殖因子)の生物学的役割、それらの遺伝子導入による治療戦略の可能性を検討した。 4.難治性疾患に対するアデノウイルスベクターと新規遺伝子による治療法の可能性を検討した。 <今後の方針> 種々の先天代謝疾患動物モデルで、このキメラベクターやガットレスアデノウイルスベクターを用いた肝遺伝子導入による治療効果、並びに副作用などについて詳細に解析し、臨床応用の可能性などを検討していく。
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