研究概要 |
細胞増殖因子の受容体の多くは細胞内ドメインにチロシンキナーゼを内在しているかもしくは造血因子やサイトカインの受容体のようにJAK型チロシンキナーゼが非共有結合によって会合している。慢性骨髄性白血病の原因遺伝子Bcr-Ablから明らかなようにチロシンキナーゼの恒常的活性化は腫瘍や白血病の発生、悪性化に密接に関連している。最近小児急性リンパ性白血病で頻繁に認められる染色体転座t(9;12)(p24;p13)が転写因子TELとチロシンキナーゼJAK2の融合遺伝子であることが報告された。転写因子TELの重合化ドメインとJAK2のチロシンキナーゼドメインが融合することによって恒常的に活性化されたチロシンキナーゼが生じる。そこで本研究ではJABによる活性化型チロシンキナーゼがん遺伝子TEL-JAK2の抑制機構について研究を行った。TEL/JAK2をstableにtransfectionしIL-3非依存性に増殖するBaF-TEL/JAK2にJABをtransfectionすると死滅した。このときC末側のSOCS-boxが重要な働きをしていることが明かとなった。pulse-chase実験によりJABによるTEL-JAK2の分解の促進を認めた。SOCS-boxを欠く変異JABではTEL-JAK2の分解は促進せず、SOCS boxがTEL-JAK2の分解に必要なことが示唆された。これらよりJABによるTEL-JAK2の活性化の抑制には、JH1へのJABの直接会合による抑制だけでなく、TEL-JAK2の分解も関わっていることが示唆された。TEL-JAK2の分解はプロテアゾーム阻害剤によって抑制され、またJABを共発現することでTEL-JAK2のユビキチン化が促進された。以上の結果よりJABによるTEL-JAK2の分解促進にユビキチン、プロテアソーム分解系が関わっていることが明らかになった。またSOCS-boxにElonginB, C-Cul2複合体が会合することも見いだした。本研究によってユビキチン経路を利用してがん遺伝子産物を特異的に除去する方法がはじめて明らかになった。
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