リソソーム性シアリダーゼは、細胞内では保護蛋白質/カテプシンAと高分子複合体を形成することにより、リソソームへの輸送と活性化を受けることが知られている。日本人シアリドーシス患者で同定された遺伝子変異によるリソソーム性シアリダーゼの構造変化をホモロジーモデリングで解析した。その結果、V219M、G243RおよびW240Rのアミノ酸置換変異では、保護蛋白質/カテプシンAとの分子間相互作用に関係する分子表面領域に構造変化が起こると推測された。そこで、これらの変異により、発現された酵素蛋白質がどんな挙動を示すかについて調べるため、発現実験を行った。野生型または変異型リソソーム性シアリダーゼcDNAと保護蛋白質/カテプシンA cDNAとをCOS-1細胞に導入し、発現したリソソーム性シアリダーゼの細胞内局在を免疫蛍光染色法で解析した。野生型の場合には、抗シアリダーゼ抗体によりリソソームに局在すると考えられる顆粒状蛍光がみられた。一方、G243RとW240Rの場合には、核周辺に網状蛍光像が認められた。また、V219Mの場合には、網状の蛍光像の他に弱い顆粒状の蛍光が認められた。G243RとW240Rでは、小胞体/ゴルジ体からリソソームへの輸送が障害されており、V219Mでは輸送障害はあるものの、一部の発現産物はリソソームに運ばれると考えられた。V219Mは、G243RやW240Rにくらべて構造変化の程度が小さく、残存活性が存在する事実とよく対応していた。 保護蛋白質/カテプシンAは、リソソーム性シアリダーゼだけでなく、エラスチン結合蛋白質とも結合して、その輸送を担う可能性が指摘されている。そこで、シアリドーシスで、エラスチン繊維形成に障害が起こっていないかを培養繊維芽細胞を試料として解析した。その結果、シアリドーシスにおいてエラスチン繊維形成能の低下は認められなかった。
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