シアリドーシスの病態発生機構を明らかにするため、互いに血縁関係がない4家系の日本人シアリドーシス患者の遺伝子解析を行い、P80L、V217M、W240R、G243RおよびP316Sの新規ミスセンス変異を同定した。ホモロジーモデリング法を用いて、ヒトのリソソーム性シアリダーゼの3次元構造を構築した結果、同酵素はβ-シート構造が集合してプロペラ様の構造をなし、活性部位は、その中心に位置すると考えられた。この構造を基に、これらの遺伝子変異に基づく当該酵素の構造変化を予測した。P80LおよびP316S変異に関しては、シアル酸残基と結合する活性部位を含む領域に大きな構造変化が起こると考えられた。V217M、W240RおよびG243R変異については、保護蛋白質/カテプシンAとの分子間相互作用に関連する分子表面領域に影響を与えると考えられた。保護蛋白質/カテプシンAは、リソソーム性シアリダーゼと複合体を形成して、その細胞内輸送と活性化に関係することが知られている。これらの変異のうち、V217Mによる変化の程度は、他の変異によるものに比べて小さいと考えられた。これらの変異を持つ遺伝子を発現した所、いづれも発現産物の量が減少していた。また、V217Mでは発現産物の一部がリソソームに輸送され残存活性を有するのに対して、他の変異では発現産物が小胞体/ゴルジ体に止まり、活性を失うものと考えられた。これらの構造的な変化は臨床表現型に反映すると思われた。酵素蛋白質の分子構造の視点からの解析は、シアリドーシスの病態発生機構の解明に有用と考えられる。
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