研究概要 |
メラノサイトにおけるメラニン合成の過程で細胞毒性が生じることは以前から指摘されていたが、従来は5,6-dihydroxyindole(DHI)がその毒性の主役であると考えられていた。我々は最初にドーパにsilver oxideを作用させてドーパクロムを生成、その毒性をcolony formation assayを用いて調べた。その結果、ドーパの毒性を1とするとドーパクロムは150倍の毒性を示した。DHIの毒性は5であり、Pawelekらの報告と一致した。ドーパクロムを作るにはドーパにsodium periodateを作用させる方法もある。今回、この方法で作ったドーパクロムの毒性を調べたところ、ドーパの14倍の毒性を示した。次に、0.1mMドーパ自体は毒性を示さないが、これににチロシナーゼを作用させたところ、0.5mMのドーパに相当する毒性を示すようになった。これらの結果は、DHIよりもメラニン合成経路ではひとつ上流に当るドーパクロムのほうが毒性の主体である可能性を示唆している。メラノサイトでは、ドーパクロムはドーパクロムトートメラーゼ(Dct)により触媒されDHIよりもさらに毒性が低い5,6-dihydroxyindole-2-carboxylic acid(DHICA)に変換される。従って、Dctはメラノサイトの生存に重要な酵素である可能性があり、今後検討していきたい。
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