【目的】神経線維腫内では肥満細胞が増加しており、神経線維腫部に生じる痛みや痒みなどの自覚症状の発現や神経線維腫の増殖に関与している可能性がある。一方、神経線維腫症はいくつかの亜型に分けられている。その一つに分節型すなわち神経線維腫症5型(NF5)と呼ばれるものがある。この亜型は、接合後に体細胞の一部に突然変異が生じ、そのために、全身的にではなく一部の皮膚にのみ神経線維腫症の症状であるcafe au lait斑や神経線維腫が生じるモザイクである。全身に遺伝子変異を生じている神経線維腫症1型(NF1)と、接合後突然変異で生じたNF5では胎生期の病変形成の時期が異なると考えられる。このことが神経線維腫内の肥満細胞の動態に何らかの違いを生じている可能性はないだろうか。ヒト肥満細胞は、粘膜型と結合組織型の2つの亜型にわけられる。正常組織内では、粘膜型は気道粘膜などに、結合織型は皮膚などに優位に局在するが、神経線維腫内ではどのような動態を示すのだろうか。このような観点から、NF1とNF5の神経線維腫内における肥満細胞のprofileを検討した。【材料と方法】NF1の5例から採取した5つの神経線維腫、およびNF5の2例から採取した3つの神経線維腫を材料とした。対照として健常人5例の皮膚を用いた。それぞれの組織切片を、トルイジンブルー染色、および抗ヒトtryptase抗体、抗ヒトchymase抗体を用いた免疫組織学的検索を行って観察した。【結果】NF1およびNF5の神経線維腫内の肥満細胞数は、健常人乳頭層に比べ約2倍に増加していた。亜型ではともに粘膜型が増加し、数、亜型ともにNF1とNF5で差はみられなかった。【考察】NF1とNF5で、肥満細胞数のみならず亜型にも差がみられなかったことから、両型の神経線維腫における肥満細胞に及ぼす微少環境は同様であると考えられた。
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