研究概要 |
手術時などに得られた正常皮膚をディスパーゼを用い真皮から表皮を剥離し線維芽細胞,角化細胞それぞれを初代培養を行った.角化細胞は細胞数が増えた時点で,後に増殖能を有する未分化な角化細胞を線維芽細胞シート上に播種するため凍結保存した.線維芽細胞は単層培養し,細胞数が十分増えたところでL-アスコルビン酸を添加しDMEM培養液に換え,約2週間かけ三次元構築を形成させた.この線維芽細胞シート上に凍結保存しておいた角化細胞を融解,播種した.位相差顕微鏡による観察で,重層化し錯綜した線維芽細胞上に紡錐形〜類円形の角化細胞が生着したことが確認できた. ここで角化細胞用培養液と線維芽細胞用培養液とを用いた場合での,播種した角化細胞の増殖の相違について検討した.角化細胞用培養液を用いたものでは,播種時より角化細胞は増殖し、シートを形成するのに十分な細胞数が得られた.これに対し,線維芽細胞用培養液を用いたものでは,角化細胞のシート状の重層化は確認できなかった.そこで,角化細胞の密度が70%に達するまで角化細胞用培養液を用い,その後,線維芽細胞培養液に変更し角化細胞の分化,重層化をはかった.変更後より塊状となっていた角化細胞はシート状に増殖し,三次元線維芽細胞上での角化細胞の重層化を認めた.培養液変更後一週間程度培養しシャーレよりの剥離した.これは肉眼的にもシート状となっており,線維芽細胞と角化細胞がそれぞれ三次元の構築を持った皮膚モデルが作成できた.この皮膚モデルをホルマリン固定し,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い光顕的にその三次元構造について検討した.2〜3層の三次元線維芽細胞上に塊状,一部でシート状の角化細胞が認められた.また,アポトーシスしたと思われる角化細胞は散見されたが,層状の角化は見られなかった.
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