色素性基底細胞上皮腫12症例で、病理組織所見はいずれもsolid typeの腫瘍の色素沈着部と非色素沈着部および腫瘍周辺の正常表皮の3部位に存在するメラノサイトの性状を調べた。 基底細胞上皮腫に共生するメラノサイトは正常表皮に存在するメラノサイトと似た点が多いが、電顕写真をコンピュータにとりこみ画像解析を加え、形態学的特長をメラノサイトの核・細胞比、円形度などのパラメーター、細胞質のメラノソーム数などについて、計測値を統計学的に比較した。結果は腫瘍周辺の正常メラノサイトと腫瘍内のメラノサイトとでは細胞の大きさ、性状が異なることが示された。また腫瘍内でも色素沈着部と非色素沈着部とでは種々のパラメーターの値が異なっていた。すなわちメラノサイトは周辺から腫瘍巣内に異動してきたというよりも独自のメラノサイトが腫瘍内で発生し、腫瘍の病巣の拡大とともにそれぞれの場で増加していることが示唆された。本腫瘍は胎生期の毛包芽に似た腫瘍と考えられており、一方、毛包には2種類のメラノサイトが存在することが報告されていることから、本研究で明らかになった、少なくとも腫瘍内には2種類の異なった性状のメラノサイトが存在しているという所見は、本腫瘍起源が毛包芽とする考えを支持するものである。なお人種による本腫瘍の色の違いはこのようなメラノサイトの性状を反映している可能性がある。 腫瘍内の共生メラノサイトの超微形態に関する電顕的な定量比較検索により、色素性基底細胞上皮腫には異なる2種類のメラノサイトが存在することが明らかにされ、毛包同様のメラノサイトの多様性が確認された。
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