研究概要 |
ヒトメラノーマWM793をサブクローン化してヒアルロン酸マトリクス形成と細胞の運動性が相関することを見い出し,ヒアルロン酸合成酵素遺伝子HAS1,HAS2をヒアルロン酸低発現細胞への導入・強制発現によって細胞運動性が増強することを報告した。 今年度は独立の遺伝子導入実験によって,ヒアルロン酸のマトリクス形成と細胞運動が相関することを確認し,さらにそのことがin vivoでの造腫瘍性と対応するか否かを検討した。1x10^7培養細胞を腹腔内に移植したところ,mock遺伝子導入細胞とHAS1あるいはHAS2を導入した細胞の間で顕著な造腫瘍性の差が認められた。HAS1あるいはHAS2を導入した細胞では,4ヵ月位で腫瘍形成が認められた。一方mock遺伝子導入細胞では8ヵ月以上たっても腫瘍は認められなかった。また,HAS1導入細胞とHAS2導入細胞とを比較するとHAS1導入細胞が1〜2週早く腫瘍が認められた。これらの結果は皮下への細胞移植でも同様の傾向を示している。腫瘍形成までに数ヵ月を要することは宿主内でこれらの細胞がdormant stateがあることを示唆しており,このことはヒトの系に似た興味深い現象とも考えられた。これはヒアルロン酸のマトリクス形成がin vivoで細胞運動を増強するのみならず,それ以上に宿主の生体防御細胞の攻撃から腫瘍細胞を守りアポトーシスを防いだとも推定される。 アポトーシスに関しては,我々が新規に見い出した遺伝子ASCの機能解析が進み,ASC内に存在するアポトーシス情報伝達に必要なCARD領域に加え,N末に存在するpyrin相同領域が自分自身とまたCARDと結合することを見い出し,未知の情報伝達に重要な働きをする領域と考えPYDと命名し提唱した。その後,PYDとCARD領域を同時に有する遺伝子が複数見い出されその機能が注目され始めた。
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