研究課題/領域番号 |
12670816
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中島 泉 名古屋大学, 医学部, 教授 (40022826)
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研究分担者 |
鈴木 治彦 名古屋大学, 医学部, 助教授 (90283431)
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キーワード | がん遺伝子 / RET / Rfp-Ret / スーパー活性化 / トランスジェニックマウス / メラノーマ / 紫外線 / 悪性転化 |
研究概要 |
フロンガスの乱用のため、オゾン層の破壊が進み、地上にふりそそぐ有害紫外線の量が著明に増加している。紫外線量が1%増加すると皮膚癌は2%増加する。現在、皮膚悪性黒色腫は、地球上で最も増加率の著しい癌となり、致死率が高いため、予防法や有効な治療法の確立が急務となっている。筆者らは、通常環境下では決して癌化しない良性メラノサイト系腫瘍を必発するRET-トランスジェニック系マウスを樹立し、このマウスに紫外線を長期間照射すると皮膚悪性黒色腫が発生することを予備的に認めた。本研究ではこの成績を確認するとともに、その機序の一端を明らかにした。 30kJ/m^2の紫外線を1回マウスの皮膚に照射すると、導入したがん遺伝子であるRfp-Retの発現量が1.2-2倍増加し、それ以上にRfp-Retのキナーゼ活性が3-5倍増強することを示した。これに伴ってRetキナーゼの下流にあると考えられるERK/c-Junが発現量として1.5-2倍、リン酸化レベルとして2-3倍増加した。一方、35-45kJ/m2/dayの紫外線を週に5回28週間照射したマウスでは組織学的な悪性像を示し転移を伴う皮膚悪性黒色腫の発生を確認したが、これに伴って、Rfp-Retが発現量として4-5倍、キナーゼ活性として8-10倍の増量を認めた。同時にERKとc-Junの発現量とリン酸化レベルもRfp-Retのそれと平行して増加した。この結果は、恒常的に活性化された状態にあるがん遺伝子産物RET-MEN2Aを持つ細胞に試験管内で紫外線を照射すると、さらに活性が一段と増加してスーパー活性化をおこすことを示した成績を生体内で再現する成績であった。そこでRfp-Retを導入した細胞に紫外線を照射したところ、スーパー活性化が観察された。現在、この活性化の標的となるRfp-Ret分子内のアミノ酸残基の解析を進めている。
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