研究概要 |
炎症性サイトカインによる誘導型NO合成酵素(iNOS)誘導発現後のNO産生が皮膚の接着因子発現、細胞障害、細胞増殖および分化にどのような効果をもつかを調べるため、初年度(平成12年度)はマウス角化細胞株Pam212およびマウス血管内皮細胞株F2を用い以下の実験をした。 Pam212細胞における接着因子ICAM-1の発現を、(1)刺激なし、(2)IFN-γまたはTNF-α刺激、(3)IFN-γまたはTNF-α刺激にiNOS specific inhibitor添加、の3種についてWestern blotting法で調べた。この結果、(1)〜(3)で特に差を認めなかった。角化細胞の分化を規定する因子transglutaminase-1(TG-1)およびinvolucrinの発現も同様に(1)〜(3)のサンプルについてWestern blotting法で調べた。TG-1は検出できず、involucrinでは特に差を認めなかった。 ICAM-1は本来、IFN-γまたはTNF-αで発現誘導されるはずであるし、TG-1も多量に発現していると考えられるため、角化細胞株Pam212ではなくマウスプライマリ培養細胞で調べるべく、既報告(Caldelari R et al.,JID114,1064,2000)に従いマウスプライマリ培養を試みたが、未だ安定的な培養法は確立できていない。次年度(平成13年度)は、マウス角化細胞株およびマウスプライマリ培養角化細胞での実験に加え、ヒトプライマリ培養角化細胞でも検討する予定である。 マウス血管内皮細胞株F2はIFN-γおよびTNF-α刺激により細胞障害をおこし、この現象がNOを介していることを、iNOS specific inhibitor,NO donor,NO scavenger等を用いて明らかにした。この結果は、血管炎等の皮膚炎症時に炎症性サイトカインにより誘導産生されるNOが血管内皮細胞障害に関与している可能性を示唆するものである。
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