研究概要 |
皮膚炎症病態成立には、IL-1β,IFN-γおよびTNF-αなどのサイ'トカインが深く関わっている。これら炎症性サイトカインにより炎症局所では誘導型NO合成酵素(iNOS)が誘導され多量のNOが産生されている。本研究では、NOが皮膚炎症にいかに関わるかを調べるため、NOの接着因子発現、分化、細胞障害および細胞増殖に対する効果を調べた。 マウスプライマリ角化細胞を用い、1.刺激なし、2.IFN-γ+TNF-αで刺激(iNOS誘導による多量のNO産生あり)、3.IFN-γ+TNF-αで刺激しiNOS specific inhibitorを添加(iNOS誘導はあるがNO産生はなし)、の3種の条件下で接着因子ICAM-1の発現を調べた。Western blotting法でみるとICAM-1は1と比較して2,3で顕著に誘導されていたものの、2,3間で有意な差を認めなかった。角化細胞の分化を規定するtransglutaminase-1(TG-1)やinvolucrinの発現も同様に調べたところ、2,3間で有意な差を認めなかった。今回は2でNO産生が比較的少ないサンプルを用いたが、もっと大量のNO産生がある場合は今後の課題である。 NOによる細胞障害を、マウス角化細胞株Pam 212にNO donorを加えた後の培地中のLDH酵素活性測定により評価した。これにより低濃度NOは細胞保護作用をもち高濃度NOは細胞毒性をもつことがわかった。 マウス血管内皮細胞株F-2はIFN-γ+TNF-α刺激により細胞障害をおこすが、この細胞毒性はNOを介していることをiNOS specific inhibitor等を用いて明らかにした。これにより、皮膚炎症時の血管障害成立には炎症性サイトカインにより誘導されるiNOSから産生されるNOが深く関与している可能性が示唆された。
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