研究概要 |
本研究の目的の1つは、ヒト正常皮膚の表皮と真皮のテロメア長を測定することにより、その短縮が皮膚の老化および光老化と関連するマーカーとなりうるかを解析することにあった。この目的のため、今年度は正常皮膚におけるテロメア長測定のための最適の実験条件の設定に取り組んだ。まず、表皮と真皮の分離法について、1)dispase(5000catalytic unit/ml)処理,2)0.2%collagenase処理で分離後、表皮を0.25%trypsinで処理、3)0.25%trypsin処理、の3つの方法を比較検討した。これらより、DNAを抽出し、制限酵素で処理した後、電気泳動し、サザンブロットを行なった。テロメア配列をジゴキシゲニンでラベルしたプローブにより平均テロメア長を測定した。その結果いずれの分離法を用いても、同じ程度のテロメア長を検出することができた。測定法が今年度の研究で確立できたことより、次年度に本格的な解析をすすめる予定である。つぎに、紫外線発癌におけるテロメラーゼの活性化の関与を実験的に明らかにするため、ヒトの日光曝露皮膚より得られた不死化角化細胞HaCaTにおける、増殖とテロメラーゼ活性との関連を解析した。HaCat細胞をレチノイン酸(RA)、VitD3、EGFレセプター阻害剤で処理すると3日後に細胞数はコントロールの、それぞれ40%、52%、23%に減少し、増殖抑制がかかることが判明した。これら処理によりアポトーシスはほとんど誘導されず、すべての処理群でテロメラーゼ活性の軽度の低下がみられた。EMSA法で測定したSTAT3の転写活性は、VitD3では変化なく、RAとEGFレセプター阻害剤では低下した。またAP1の転写活性は、VitD3とRAで低下したが、EGFレセプター阻害剤では変化がなかった。今後さらにNFκBの転写活性も計測し、HaCaT細胞の増殖制御とテロメラーゼ活性、転写因子活性の関連を明らかにしたい。
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