研究概要 |
正常皮膚におけるテロメア長測定のための最適の実験条件の設定に取り組んだ。表皮と真皮の分離法について、1)dispase処理,2)collagenase処理で分離後、表皮をtrypsinで処理、3)trypsin処理、の3つの方法を比較検討した。DNAを抽出し、サブテロメア領域でDNAを切断する制限酵素Hinflで処理後、電気泳動し、テロメア配列をジゴキシゲニンでラベルしたプローブ(TTAGGG)_4を用いてハブリダイズし、平均テロメア長を測定したところ、いずれの分離法を用いて同じ程度の表皮テロメア長が検出できた。以降の実験はdispase処理を用いた。ヒト正常皮膚を用いてテロメア長の計測を行なった。14サンプルの正常皮膚を用いテロメア長を測定したところ、11サンプルで測定でき、加齢とともに表皮テロメア長が短縮する傾向が見られた。真皮のテロメア長も測定したが多くのサンプルでテロメア長が極端に短く、2例でのみ信頼できる測定結果を得た。次に紫外線発癌におけるテロメラーゼの活性化の機序を明らかにするため、不死化角化細胞HaCaTに対し中波長紫外線を照射し、テロメラーゼ活性を測定したところ、照射群で活性の増強がみられた。ヒト有棘細胞癌由来細胞株HSC-1は高いテロメラーゼを有するが、これにEGFシグナルが関与しているかを調べるためEGFレセプター阻害剤であるAG1478で処理したところ、増殖の低下と共にテロメラーゼ活性の低下が見られた。この効果は濃度依存性を示した。テロメラーゼの触媒酵素であるhTERTの発現を転写因子であるmycとsp1が制御することが知られているが、HSC-1をAG1478で処理したところmycとsp1の蛋白レベルでの発現が抑制された。
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