ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染による細胞の増殖や分化の異常が原因HPVの型特異的であことは「HPV型特異的細胞変性効果」と呼ばれ、そのメカニズム解明はHPV感染症の重要な研究課題となっている。今までに、HPV型特異的な「細胞質内封入体」の出現や「色素産生異常」を観察・記載して来たが、昨年度内に新しい細胞質内封入体(Fibrillar typeと命名した)を有するウイルス性疣贅を発見、これより新HPVDNAのクローニングに成功していた。本年度その全塩基配列の決定に成功し、2001年8月29日付けをもって国際パピローマウイルス・リファレンスセンター(ハイデルベルグ)よりHPV88と命名された。 HPV88をプローブにして、多数の疣贅を対象に、特定の臨床・病理組織像との相関を検討した結果、HPV88の検出される疣贅は、臨床的に小型の尋常性疣贅様であることが多く、病理学的には、常にfibrillar typeの細胞質内封入体を有することが分かった。これは、「HPV型特異的細胞変性効果」の概念を追認するデータとなった。現在、海外共同研究者のDoorbar博士によって、HPV88E4蛋白に対する特異抗体を作成中であり、本封入体の形成におけるE4遺伝子蛋白の関与について研究を展開する予定である。 また、HPV60感染疣贅では、homogeneous typeの細胞質内封入体が「型特異的細胞変性効果」として知られる。我々は、この封入体の欠如したHPV60感染疣贅を経験し、その理由について検討した。E4領域に遺伝子的変異はなく、転写調節領域であるE2領域に塩基配列の変異を認め、転写レベルでE4が機能していない可能性を考えた。
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