メラノーマペプチド療法に対する免疫エスケープ機構の解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670828
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 影下 登志郎 熊本大学, 医学部, 助教授 (20152605)
• キーワード: メラノーマ / ペプチド療法 / 免疫エスケープ / HLA Class I / TAP / LMP / MICA

研究概要

1)メラノーマ組織におけるメラノーマ関連ペプチド、HLA-A2発現とCD8Tリンパ球の浸潤。
T細胞によって認識されるメラノーマ関連ペプチドMART-1はHLA-A2によってCD8T細胞に提示される。そこでHLA-A2患者病巣におけるMART-1及びHLA-A2の発現とCD8陽性Tリンパ球の浸潤度を免疫組織学的に検討した。MART-1はメラノーマ細胞によく発現していたが、HLA-A2はメラノーマの病勢に伴い発現が低下した。HLA-A2発現とCD8陽性Tリンパ球の浸潤度は相関した。さらにMART-1及びHLA-A2両者の発現が低下している症例はCD8陽性Tリンパ球浸潤も少なく予後不良であった。これらはMART-1ペプチド療法を行う場合、患者選択や治療に反応しない原因の追求として、メラノーマ細胞におけるこれらの発現有無を検討する必要がある。
2)サイトカインによるHLA Class I関連分子の発現調整。
培養メラノーマ細胞をIFN-γやTNF-αで処理するとメラノーマ関連ペプチドに変化はないが、HLA Class Iやその関連分子(TAPやLMP)発現が増強することがFACSやウエスタンブロットで明らかになった。ペプチド療法の際、サイトカインを併用することで有効性が上がる可能性がある。
3)メラノーマ患者組織におけるMICA発現の検討。
HLA Class Iに関連した分子であるMICAはNK細胞のレセプターである。メラノーマ細胞におけるMICA発現は病勢と伴に低下した。これはMICAがメラノーマ細胞がNK細胞からの攻撃をエスケープするのに関与していることを示唆する。

研究成果

• [文献書誌] Kageshita T.: "Myelodysplastic syndrome following treatment of malignant melanoma with vincristine, ACNU, dacarbazine."J.Dermatol.. 27. 178-180 (2000)
• [文献書誌] Kageshita T.: "αvβ3 expression on blood vessels and tumor cells in primary melanoma lesions ; differential association with tumor progression and clinical prognosis."Cancer Immunol.Immunother.. 49. 314-318 (2000)
• [文献書誌] 影下登志郎: "足底のメラノーマ:熊本大学とハインリッヒハイネ大学の比較検討."Skin Cancer. 15. 231-235 (2000)
• [文献書誌] Kageshita T.: "Clinical significance of MART-1 and HLA-A2 expression and CD8+T cell infiltration in melanocytic lesions in HLA-A2 phenotype patients."J.Dermatol.Sci.. 25. 36-44 (2001)
• [文献書誌] Kageshita T.: "Growth inhibition of human malignant melanoma transfected with the human interferon-β gene by means of cationic liposomes."Melanoma Res.. (in press).
• [文献書誌] Kageshita T.: "Tissue factor expression and serum level in patients with melanoma does not correlate with disease progression."Pigment Cell Res.. (in press).