研究概要 |
1)T細胞からの免疫エスケープ機構の解析 T細胞によって認識されるメラノーマ関連ペプチド(MART-1,gp100)はHLA class I拘束性があり、HLA class I A2によって提示される。そこでHLA-A2患者病巣におけるMART-1及びHLA-A2の発現とCD8陽性Tリンパ球の浸潤度を免疫組織学的に検討した。MART-1やgp100はメラノーマ原発巣には強発現しているが、転移巣では発現低下が見られ、まったく発現が見られない症例も存在した。メラノーマ細胞のHLA class I及びその関連分子であるLMPやTAP分子群の発現低下もメラノーマの病勢と相関しており、それぞれの分子間は強い相関がみられた。さらにメラノーマ細胞におけるHLA class I及びそのallele (HLA-A2等)発現とCD8+T細胞浸潤は有意に相関し、CD8陽性T細胞浸潤が少ない症例は予後不良であった。特にメラノーマ関連ペプチドとHLA-A2の両者が消失している症例は極めて予後が不良であった。 培養メラノーマ細胞をIFN-γで処理するとHLA class I及びLMPやTAP分子群の発現が上昇することがFACSやウェスタンプロットで明らかになった。 以上の研究成果はメラノーマペプチド療法に対する免疫エスケープ機序としてメラノーマ細胞における(1)メラノーマ関連ペプチド発現低下、(2)HLA class I及びそのallele (HLA-A2等)発現低下、(3)LMPやTAP分子群の発現低下などによることが明らかとなった。さらにこれらの免疫エスケープ現象は原発巣で既に生じており、予後と密接に関連していることが判明した。 メラノーマペプチド療法を行う場合の患者選択や治療に無反応例にはこれらの発現を検討する必要がある。また、HLA class I、LMPやTAP分子群の発現を回復させるためにサイトカインの併用が有用であることが示唆された。
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