本年度はドライスキンを呈する老人性皮膚掻痒症のかゆみメカニズムを、表皮内神経線維との相関において検討した。 1.老人性皮膚掻痒症の表皮内神経線維の密度と分布 患者皮膚を採取(生検)し、Bodian染色して表皮内神経線維の数と長さを測定した。コントロールには手術時に得られた正常皮膚を用いた。その結果、老人性皮膚掻痒症の皮膚では正常皮膚コントロールと比較して単位当たりの神経線維の長さ、数ともに明らかに表皮内神経線維の増加が認められた(長さで約2.5倍、長さで約4.5倍の増加)。神経線維の分布では、多くは基底層から有棘層に分布して認められたが、一部の線維は表皮内深く進入し角層直下にまで認められた。 以上の結果は老人性皮膚掻痒症の患者では、皮脂膜、角層問脂質、天然保湿因子の減少により易刺激性となった皮膚を介して外的機械的、化学的刺激が角層直下にまで進入している神経線維を刺激し、生じた活動電位が直接大脳皮質に達しかゆみが認識されることを示唆しているものと思われる。この場合にはヒスタミンなどのchemical mediatorを介しておらず、いわゆる抗ヒスタミン剤は奏功し難いものと思われる。 2.今後の検討課題 C線維に特異的に存在することが知られているSubstance Pに対する抗体を用いて染色したが、染色法に問題があり染色されなかった。現在さらに検討中である。
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