痒みには表皮真皮境界部に存在するC線維がヒスタミンなどの化学的刺激や温度、機械的刺激などにより活性化されて生じる末梢性の痒みとオピオイドペプチド-オピオイドリセプター系が活性化して生じる中枢性の痒みがある。臨床的には抗ヒスタミン薬が奏功する痒みと抗ヒスタミン薬に抵抗を示す痒みに分けられる。本研究では抗ヒスタミン薬が奏功しない難治性の痒みを呈する乾皮症、アトピー性皮膚炎、血液透析患者の痒みの発痒メカニズムについて研究した。その結果、1)ドライスキン(乾皮症、アトピー性皮膚炎)ではC線維が表皮真皮境界部に終わることなく角層直下まで侵入しているために、神経線維がヒスタミンなどのケミカルメディエイターを介さずに直接外部からの機械的、化学的、物理的刺激により活性化され、痒みが生じていることが示唆された。2)血液透析の患者では痒みを誘発するμオピオイド系(βエンドルフィン)が痒みを抑制するκリセプター系(ダイノルフィン)より優位になっているために痒みが生じていることを明らかにした。この結果に基づいてκリセプターのアゴニストを合成し、透析患者に投与した結果、全症例において痒みが抑制された。このことは抗ヒスタミン薬抵抗性の痒み対策としてκリセプターアゴニストが有効であることを示唆している。
|