研究概要 |
悪性黒色腫は、再発、転移を生じやすい皮膚悪性腫瘍であり、本邦においても増加傾向がみられており、今後その制御が重要な課題となると予想される。悪性黒色腫の再発、転移に関与する因子の検索により、コントロールが将来的に可能となると考えられ、種々の色素性病変、腫瘍との比較において、悪性黒色腫についての様々な検討を加えてきた。 まず、良性の色素沈着症である老人性色素斑において、表皮細胞由来のEndothelin 1がメラノサイトの刺激因子となり、色素増強が生じることを明らかにした。さらに、良性腫瘍である皮膚線維腫の被覆表皮に見られる色素沈着が、Stem cell factor, Hepatocyte growth factorの関与により生じることを示した。また、悪性腫瘍のなかでは比較的予後が良好で色素増強を示す基底細胞癌においては、Stem cell factorの関与が疑われる所見を見いだした。 悪性黒色腫においては、Growth related oncogene-αの関与をメラノーマ培養細胞を用いて検討し、メラノーマの形質転換、再発時の増殖などの過程において、GRO-αが重要な働きを有することを示唆する所見を得た。また、悪性黒色腫との鑑別がしばしば問題となるSpitz母斑を対照に、抗GRO-α抗体を用いて染色したところ、前者での陽性所見に比較して後者では陰性であり、本染色法が鑑別に有用である可能性を見いだした。 これらの研究成果をさらに発展させることにより、メラノーマ特異的な増殖機構を解明し、それに対する制御法を確立することにより、悪性黒色腫の予後の向上に結び付けたい。
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