哺乳類のメラニン生成の遺伝的および非遺伝的調節機構

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670844
• 研究機関: 藤田保健衛生大学
• 研究代表者: 伊藤 祥輔 藤田保健衛生大学, 衛生学部, 教授 (70121431)
• 研究分担者: 広部 知久 放射線医学総合研究所, 生物影響研究部, 主任研究員 (10111238) ; 若松 一雅 藤田保健衛生大学, 衛生学部, 助教授 (80131259)
• キーワード: マウス / アグチ / ブラック / ピンクアイドダイリューション / メラノサイト / メラノソーム / チロシン / チロシナーゼ

研究概要

マウス毛色遺伝子の中でアグチ遺伝子の機能を調べるため、C57BL/10JHir系統のブラックおよびコンジェニック系統のC57BL/10JHir-A/Aのアグチのマウスから皮膚を経日的に採取し、トリプシンを用いて表皮と真皮に分け、それぞれのユーメラニン、フェオメラニン量を測定した。その結果、3.5日、5.5日のアグチの表皮においてはブラックの表皮に比べ有為にフェオメラニン量が多かった(5.5日では約100倍)。3.5日、5.5日の皮膚の表皮と真皮をトリプシンで分け、それぞれをRT-PCR法でアグチ遺伝子の発現を調べたところ、真皮には発現が見られたが、表皮には見られなかった。これらの結果からアグチタンパク質は表皮では発現されず、真皮で合成されたアグチタンパク質が表皮に浸透し表皮メラノサイトのフェオメラニン合成を誘導すると考えられる。一方、ピンクアイドダイリューション遺伝子の機能を調べるために、C57BL/10JHir-p/pのマウスの皮膚より表皮メラノサイトを初代培養した。ピンクアイドダイリューションのメラノサイトはほとんどメラニンの生成がみられず、増殖活性も低かった。メラニンの原材料であるL-チロシンを加えるとメラニンの合成が始まり、培養液にエンドセリン-1,-2,あるいは-3を加えるとメラノサイトの増殖活性が回復した。また、ピンクアイドダイリューションのメラノサイトはL-チロシンを加えて培養すると培養液中にユーメラニンの前駆体を多く放出することがわかった。これらの結果から、ピンクアイドダイリューション遺伝子は、メラノサイトの増殖制御については、組織環境からのエンドセリンの供給に異常があり、分化に関してはユーメラニンの前駆体のメラノソーム内での保持機構に異常があると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] T.Hirobe and H.Abe: "ACTH4-12 is the minimal message sequence required to induce the differentiation of mouse epidermal melanocytes in serum-free primary culture"Journal of Experimental Zoology. 286・6. 632-640 (2000)
• [文献書誌] T.Kunisada,H.Yamazaki,T.Hirobe et al.: "Keratinocyte expression of transgenic hepatocyte growth factor affects melanocyte development, leading to dermal melanocytosis"Mechanism of Development. 94 1/2. 67-78 (2000)
• [文献書誌] T.Hirobe: "Endothelins are involved in regulating the proliferation and differentiation of mouse epidermal melanocytes in serum-free primary culture"Journal of Investigative Dermatology. (in press). (2001)
• [文献書誌] J.Suto,K.Wakamatsu,H.Yamanaka et al.: "Quantitative trait loci that modify the sootiness of yellow pigmentation in KK-A^y/a mice"Mammalian Genome. 11. 639-644 (2000)
• [文献書誌] AL.Lehman,WK.Silvers,N.Puri,K.Wakamatsu et al.: "The under white (UW) locus acts autonomously and neduces the production of melanin"Journal of Investigative Dermatology. 115. 601-606 (2000)
• [文献書誌] ML.Lamoreux,K.Wakamatsu,S.Ito: "Interaction of major coat Color gene functions in mice as studied by chemical analysis of eumelanin and Pheomelanin"Pigment Cell Research. 14. 23-31 (2001)