研究概要 |
ファンクショナルMRI(fMRI)におけるアーチファクトを画像熱雑音レベルまでに低減し、脳機能検出感度を根本的に向上させることを目的とした。研究の前半に当たる本年度は、アーチファクト要因の中で対策が最も困難である拍動がどのようにfMRI画質に影響を与えるか、そのメカニズムを明らかにすることを目指した。波形データ収集装置を用いfMRI撮像中の拍動波形および撮像タイミングをモニタし、fMRI実験での時系列撮像の各撮像タイミングにおける拍動位相を求め、その拍動位相を基に、得られた時系列画像を解析した。その結果、拍動に連動し脳内に微小な歪みが発生することを確認した(研究発表:Proc ISMRM)。また、その歪みは微小であっても、fMRI画質に大きく影響した。脳内の微小な歪みは拍動に連動した脳脊髄液の振動現象により発生することが予想されたので、次に,この頭蓋内振動現象がfMRI検出感度にどのように影響するかを定量的に明らかにすることを目指した。まず、撮像の繰り返し時間を微調することで、fMRI実験の際周期的に発生させる脳神経活動の周期と拍動周期の相関性を大きく変え、その相関性応じfMRIでの賦活領域の検出感度が大きく変化する傾向を確認した(研究発表:Radiology、放射線医学物理2000)。さらに、その相関性を示す定量指標を導入し、fMRIの検出感度がその指標に依存することを見出した。その結果、拍動による頭蓋内振動による脳脊髄液の部分体積効果がfMRI極出感度に大きく影響し、その影響の程度は拍動の周期とfMRI実験での脳神経活動の周期の相関が強いほど大きなことが明らかになった(研究発表:放射線医学物理2001)。本年度の研究により、拍動がfMRI検出感度に与えるメカニズムが明らかになり、拍動対策へ向けての重要な情報を得た。
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