陽子線治療計画の高精度線量計算に必要な正確な入射ビームモデルを2重リング・2重散乱体法の場合に作った。即ち、ビームライン上に配置された複数の散乱源を有効線源(傾きのない位相空間楕円で表現できる。)で代表して取り扱い、有効線源のパラメータを簡単に計算する方法を明らかにした。2重散乱体法の場合、2重リングを第2散乱体として使っているので有効線源は内リング、外リングに対応して2つあり、照射点に寄与する各有効線源からの寄与は、中心からの距離により変化し、且つ方向依存性を持つ。これを、分布関数として与える方法を明らかにした。また、有限なエミッタンスを持つビームの場合に2重リング2重散乱体法を適用するときの最適なパラメータの決定法を、既に分かっているゼロエミッタンスの場合に対応付けて求める方法を考案した。そしてこれを使って有効線源モデルに簡単に適用する方法を示した。 有効線源パラメータは、複数の場所でコリメータを使って半影を測定し、またガウス型ビームの半値幅の変化を測ることで確かめることが可能だが、コリメータを使っての半影測定は相対誤差が大きいので概略の値の確認にするのに留まる。またコリメータを使った2重リングを用いた半影測定にはコリメータの表面散乱の影響もあることが分かった。2重散乱体法で作った一様なビームの場合には、中心軸におけるフルエンスの深さ依存性を測ることで入射ビームの角度の拡がりを知ることが可能である。 ペンシルビームの線量計算に必要な分布の中心軸項(ブロードビームの水中の深部線量分布)を求めるためにモンテカルロコードGEANTを使って、10点のエネルギーに対応したブロードビームの水中でのブラッグ曲線(2重散乱体通過後)を計算した。 L型ファントムを通過した陽子線が水中で作る線量分布を測定し、その結果がペンシルビーム法で計算した分布と良く合うことが示された。
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