研究概要 |
中性子捕捉療法に用いるホウ素化合物取込みの細胞周期依存性に付いて、in vitroの系で検討した。 チャイニーズハムスター肺由来細胞であるV79,マウス上皮癌細胞のSCCVII,ラットグリオーマC6,およびヒトグリオーマU87等の細胞を培養し、そめ対数増殖期、及び増殖がプラトーに達してから2日以上経過し、G0期にある細胞が増えた段階に分けてホウ素を添加、培養してホウ素を取込ませた。トリプシン処理して細胞浮遊液とした後、フローサイトメトリーを用いてG0/G1群及びG2/M群に分け、それぞれに含まれるホウ素量を、ICP発光分光分析装置で測定、解析した。ホウ素化合物は、現在臨床でもっともよく使われるソディウムボロカプテイト(BSH)と、ボロノフェニールアラニン(BPA)を使用した。 その結果、BPAでは、G0/G1群に比べてG2/M群では2〜3倍のホウ素取込みがあることが明らかになった。 BSHはBPAに比べ全体の取込みが少ないため、細胞数の数ないG2/M群ではホウ素量を定量することが困難だったが、使用するフローサイトメトリーをFACS VantageからFACS SEに換えたことにより、細胞を速く、大量に集めることが可能になった。その結果細胞周期性がほとんどないと思われたBSHも、BPAほどではないがG0/G1期に比べてG2/M期の取込みがやや多いことが分かった。しかしこれは、細胞の大きさの違い(G2/M期の細胞はG0/G1期にくらべると細胞自体が大きい蛋白量で1.5倍前後)によるものと思われる。BPAの場合は、細胞の大きさを考慮に入れても、G2/M期の取込みが多いのである。 これらの結果及び手法は、より効果的な照射線量の設定、細胞周期依存性が低く、腫瘍集積性の高い新しいホウ素キャリアーの開発に役立つと思われる。
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