研究概要 |
カテニンのチロシンリン酸化によってカドヘリン依存の細胞接着が不安定化すると細胞の増殖能に影響を与え、増殖制御の消失と浸潤活性の増大をもたらすと考えられていることから,照射による細胞間接着因子の発現の変化が細胞接着構造の近傍にあるEGFRをはじめとする細胞増殖受容体の活性化や発現の変化にどのような影響を与えるのかについて検討する必要がある。そこで、細胞膜上の受容体を起点とする生存シグナル伝達の活性化が抗癌剤や放射線に対する感受性の決定要因ならびに細胞接着因子の発現にどのような影響を与えるか解析した。EGFRを強発現している細胞では放射線照射によって、EGFRが自己リン酸化を起こし生存シグナルが活性化され、アポトーシスの抑制や細胞増殖が促進されることが明らかとなった。また、EGFR、Ras-Raf-MAPKならびにPI3K-AKT/PKBの阻害剤を用いて生存シグナル伝達経路を阻害したところ、強い放射線増感効果がp53 statusに関わらず認められた。野性型p53を有する細胞では、アポトーシスの誘導が増感に関与していることが示唆された。次に足場非依存性増殖能を検討する目的で、Poly(HEMAをプレートなどにコートすると細胞の接着性を阻害できることから、そこで、細胞の接着の状態ならびに足場非依存性増殖が放射線応答にどのように影響するかを検討した。Poly(HEMAをディッシュの表面にコートすると細胞の接着は完全に阻害された、この状態で放射線を照射したところ、アポトーシスが接着が阻害された細胞で誘導されていることが明らかとなった.細胞接着を抑制することで,放射線感受性が増強したことは、細胞と細胞外マトリックスとの相互作用により癌細胞でMAPK cascadeおよびPI3Kの活性化が誘導され、これが癌細胞の放射線応答に影響を与え、放射線感受性を修飾した結果とも考えられた。
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