前年度の試験管内での検討に引き続き、担癌マウスにおける実験的放射免疫療法を行った。LS180ヒト大腸癌細胞株(機能的p53欠失)をヌードマウス皮下に移植し、I-131標識抗大腸癌A7抗体(4.63MBq)を投与し腫瘍増殖を観察した。治療効果を、未治療群、pentoxifylline(50mg/kg/day)投与群、放射免疫療法群、pentoxifylline併用放射免疫療法群において比較した。pentoxifylline投与のみでは腫瘍増殖に有意な影響を認めなかった(治療開始15日後の相対腫瘍径は、未治療群で16.8±3.60、pentoxifylline投与群で13.9±2.17であった)。しかし、pentoxifylline投与により放射免疫療法の治療効果は、有意に改善された(放射免疫療法群3.43±0.44、pentoxifylline併用放射免疫療法群1.86±0.59; p<0.05)。抗体の体内動態の解析から、pentoxifylline投与は体内分布に影響を与えないことが判明した。一方、微小電極による酸素分圧測定の結果、pentoxifylline投与により腫瘍内酸素分圧が改善することが示された(対照群16.9±9.75mmHg、pentoxifylline投与群25.6±11.3mmHg; p<0.01)。本年度のこれらの結果および前年度得た結果から、pentoxifylline投与による複数の作用(腫瘍酸素化効果、周期停止抑制効果)の同調効果により放射性医薬品による内照射療法の効果が増強される可能性が示された。
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