透析患者の内シャントはしばしば狭窄をおこし、保存的治療法として径皮的拡張術(PTA)が行われるが、PTA後に効率に再狭窄を生じる。狭窄は内シャントの動静脈吻合部の静脈側に生じるとされているが、動脈の再狭窄に対する放射線治療の有効性は多くの報告でみられるものの、静脈のPTA後の再狭窄に対する放射線治療の有効性についてはあまり報告がなく、また実験例でもステントを留置して内膜過形成を作成した報告がごく少数みられるのみである。ステントを留置すればほぼ確実に内膜過形成を作成できるが、臨床ではPTA後の再狭窄例にステント留置を行うことが多いこと、また実験モデルとしては手技的、費用的に負担が大きいため、ステントを用いず、かつ簡便に照射実験の行える静脈の狭窄モデルの作成を考えた.実験対象としてウサギの頚静脈を用い、バルーンによる過拡張による内膜過形成を試みた。実験計画は、ウサギの頚静脈にバルーンカテーテルを挿入してこれを拡張し、静脈の血管壁に損傷を与え、血管造影にて血管狭窄の状況を経時的に観察し、狭窄が確認された時点で病理組織学的検討を行うこととした。拡張前の血管径は5mmで、5Frバルーンカテーテルにより血管拡張術を行った。40日後に第一回目の血管造影を行ったところ、拡張前血管径に対し30%の狭窄がみられたため、この時点で観察を終了し右頚静脈を摘出、病理組織学的検討を行った。病理組織では、拡張部分に血管内膜と平滑筋層の断裂像、およびこの箇所から10mm中枢側の間に血管内膜の肥厚像がみられた。この結果、バルーンによる拡張でも静脈に内膜の過形成をおこすことが可能であること、また内膜肥厚は拡張部分よりやや中枢側に生じていることから、照射実験の際にはバルーン拡張部分よりも少なくとも1cm以上中枢側を含めた照射範囲をとる必要性のあることが示唆された。
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