研究概要 |
心筋におけるエネルギー産生系としての脂肪酸代謝は心筋がその機能を維持するために根元的な生化学的反応であり、診断対象組織の質的診断を目的とする核医学検査において、この心筋脂肪酸代謝機能評価は重要な診断目標である。事実、本院においてもC-11-パルミチン酸を用いたPET診断、I-123-BMIPPを用いたSPECT診断が行われており、被験者の治療指針に大して有益な情報を与えている。しかしながら、心筋疾患は緊急を要する症例が多く、医薬品メーカーから供給されるI-123製剤や院内サイクロトロンを必要とするPET製剤では緊急性、利便性という観点から使用しづらく、ジェネレーターシステムにより容易に得られるTc-99mを用いて同様の診断が可能となることが強く望まれている。 申請者らはこれまでに肝細胞内で中鎖脂肪酸として認識されβ酸化を受ける中鎖脂肪酸誘導体で,あるMAMA-HAの開発に成功しているが、その結果を元に、昨年度はMAMA骨格に種々の炭素鎖の長さを有する脂肪酸誘導体を合成し、そのTc標識体を用いて動物体内分布を比較検討したところ、炭素鎖15を有する長鎖脂肪酸(MAMA-HDA)が最も高い心筋への取り込みを示すことを見いだした。 本年度は、その化合物が実際に心筋細胞によりβ酸化を受けているのかどうかを確認するために、成熟ラット心筋より調整した心筋細胞を用いる代謝実験を計画した。まず、細胞実験系の確立をした後、心筋細胞を用いてを代謝実験を行った。その結果、プレリミナリーな結果として、MAMA-HDAは心筋により代謝され炭素鎖の短いMAMA誘導体に代謝されていることが示唆された。
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