平成12年度は、同意を得ることのできた健康な15名のボランテイアにおいて、月経周期に従い、月経時、増殖期、排卵期、黄体期の4回、通常のMR撮影に加え、高速MR撮像を行い子宮収縮の検討、子宮蠕動の描出を試みた。MR撮像は2分間に300枚の画像を撮像したのち、シネモードで表示した。子宮蠕動は1.7倍速のシネモードにて明瞭にとらえられ、方向、強さ、速度、統合性の検討を行う事ができた。評価可能であった59例のうち、29例において、内膜の輪郭のさざ波様の運動あるいは、内膜直下筋層の低信号部分の波様の移動が認められた。この蠕動運動の出現頻度は月経周期の他の時期に比べて黄体期において少なく、妊卵の着床および初期の妊娠の保持と関連が想像された。ただし、症例が少ないため有意差は出ていない。一方、月経の各時期における蠕動運動の方向性の違いには明らかに有意差が得られた。すなわち蠕動の主たる方向は月経時には体部から頸部へ、排卵時には頚部から体部であった。各々の方向は月経血の排出、精子の輸送に合目的的であり、この蠕動運動と子宮の機能、すなわち妊孕性や月経に関する諸症状との密接な関連が示唆された。この結果は平成12年12月に行われた第86回北米放射線学会にて報告し、現在論文として投稿中である。さらに、多数の例に於いて回様の検討をすすめるとともに、超音波との対応、副交感神経遮断薬使用前後の変化、年齢による違いについての検討を進めている。
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