子宮蠕動と呼ばれる内膜直下筋層のリズミカルかつ微細な収縮運動は精子の輸送等、月経に関する諸症状、妊孕性など子宮の機能との密接な関連が示されているが、まだまだ未知の部分が多い。本研究は優れたコントラスト分解能を持つMRをシネモードとして用い蠕動の明瞭な描出・生理的意義の解明を試みたものである。 12年度は蠕動をシネモードMRにて描出する方法をまず確立したのち、超音波とMRの比較、生殖可能年齢ボランティアにおける月経周期と蠕動運動の方向・頻度の関連などについて検討した。蠕動の主たる方向は月経時には体部から頸部へ、排卵時には頸部から体部と、月経血の排出、精子の輸送に合目的的であり、蠕動運動と妊孕性や月経に関する諸症状との密接な関連が示唆された。13年度はさらに更年期女性の子宮蠕動、生殖器女性の子宮蠕動の日内変動の有無、月経時の痛みと子宮蠕動などについて検討した。閉経後女性では子宮蠕動の有無と静止時T2強調画像にてみられるjunctional zoneの見え方を比較し、junctional zoneの描出の有無は子宮蠕動の有無と一致していること、junctional zoneの描出や蠕動の有無は閉経後の年数と密に関連することを示した。月経時には一般に底部から頸部にむかうゆっくりした大きな収縮による蠕動が見られるのが普通であるが、月経時疼痛の程度の強い人ほど、強い収縮が認められた。また日内変動は他の時期にはあまり見られないが、月経時のみ明らかにみられ痛みとの相関が示された。個人差が大きくしかも主観的であるため、ともするとヒステリーとさえいわれることもある月経痛が、MRIによって目に見える形で評価できる可能性が示されたことは価値が高い。
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