我々は、覚醒時と睡眠時で音刺激に対する脳の反応がどのように異なるかを調べた。まず核磁気共鳴装置の中で脳波がとれるよう工夫した、その結果の皮膚の血流によるartifactはあるものの判定に使える脳波が安定して測定できるようになった。次に予備実験に続いて25-44才の正常男性6名について音刺激と覚醒状態との関係を調べた。これらの被験者に前日の夜、睡眠時間を少なくしてもらい翌日夕方測定した。被験者は脳波測定用に脳表に付けた後、音刺激用にヘッドフォーンを付けて閉眼状態で核磁気共鳴装置台上に横になってもらった。用いた核磁気共鳴装置はシーメンス社製マグネトームビジョン1.5テスラである。核磁気共鳴画像は繰り返し時間12秒、ニコー時間70ミリ秒で前交連と後交連を結ぶ線に平行に16スライスを1.9秒間に得ている。長い繰り返し時間は以前の撮影に伴う音の影響を少なくするためと、撮影の間に脳波を測定するためである。音刺激は1000ヘルツの純音を1秒間に5回の頻度で与えている。音刺激は核磁気共鳴画像の撮影と同期させ36秒間の周期でON/OFFしている。この状態で30分から40分間撮影した。得られた画像は体動による補正を行った後、解剖を参考にして両側の横側頭回に関心領域を設定した。また脳波は神経内科医によって覚醒、睡眠に区分された。画像はこの脳波による区分に従って覚醒、睡眠の両グループに分けられ各々のグループで関心領域内の音刺激に伴う信号変化、相関するピクセル数、最大のZ値を測定した。有意水準は0.05とした。結果は一人の被験者はほとんど覚醒状態が得られず、睡眠-覚醒の比較からは除いた。残り5人の結果では信号変化、ピクセル数、最大Z値ともに覚醒時に比べ睡眠時では有意に低下した。この結果は現在、論文投稿中でありまた2002年の放射線医学学会で報告する予定である。
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