研究概要 |
乳腺腫瘍患者で、通常のMRI撮影(スピンエコー法によるT1,T2強調画像の撮像)による形態的診断に引き続き、MRI用造影剤(Gd-DTPA、ガドリニウム)を用いてダイナミックデータ収集を行った。方法はガドリニウム10mlを約10秒間で急速静注し、高速撮像法を用いて、数秒間隔から数十秒間隔の三次元MRダイナミックデータ収集を行った。本研究では、血漿コンパートメントと細胞外腔コンパートメントの2コンパートメントモデルを想定し、両者の間をガドリニウムが濃度勾配に基づき速やかに拡散するとしたモデルを適用した。ガドリニウム静注後の動脈内ならびに組織内(腫瘍部および非腫瘍部)に設定した関心領域の信号強度変化を、非線形最小自乗法を用いて、モデル理論式に回帰した。最終的に、組織内間質密度に依存したパラメータ、ならびに、組織血流、血管透過性に依存すると考えられるパラメータを求め、腫瘍部を含んだ三次元パラメータマップを作成した。手術が施行された患者で,術前に得られたパラメータ画像と手術後の摘出標本における腫瘍内微小血管密度、間質構築とを対比検討し、本法による腫瘍内angiogenesisのin vivo評価の可能性について検討した。また、健常ボランティアならびに同意の得られた患者で、測定を複数回施行し、動脈入力関数や得られる各パラメータ値の測定再現性を検討した。また、ガドリニウムの投与方法を急速静注から持続静注に変えた場合の動脈入力関数の変化、ならびに算出される各パラメータ値の変化も併せて検討した。今後、標準入力関数の代用が可能か否か、その妥当性についても検討を加える予定である。また、乳腺腫瘍以外の患者でも、本法を応用し、angiogenesisのin vivo評価の可能性について、検討を加えて行く予定である。
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