研究概要 |
1)転移性肝腫瘍に対するレーザー治療を施行する基礎的検討として、in vitroとin vivoの動物肝を使用して、様々にレーザー治療のパラメーターを変化させ、その壊死範囲を肉眼的、病理組織学的に検討した。使用装置は波長1064nmのNd : YAGレーザーを発生するDornier Medilas Fibertom 5100(Dornier Medizintechnik, Germany)である。i)レーザー出力(5-25W)と壊死容積、ii)レーザー照射時間(5-20分)と壊死容積、iii)in vivo肝とin vitro肝での壊死容積の3項目の関係について検討した。その結果、壊死容積は最大出力の25Wの時に最大で、レーザー照射時間に比例して増加することが判明した。また、in vivo肝とin vitro肝での壊死容積は前者が後者のおよそ9分の1となった。 従って、実際の臨床応用において、効果的に短時間の治療を行うためには、レーザー出力を出来るだけ高くするべきと考えられた。 2)1)において、治療をモニターするMR撮像法の検討を行った。対象はin vitroとin vivoの動物肝で、出力ワット数25W、10Wで照射を行った。磁場強度0.2Tの常伝導型オープン型MR装置のMAGNETOM OPEN VIVA(Siemens, Germany)を使用し、2種の高速シークエンスー2D-FLASHとTrue FISPによりこれらの治療効果をリアルタイムにモニターした。MR撮像法によるレーザー治療中の動物肝組織のMR信号の変化と、実際の壊死範囲を肉眼的、病理組織学的に比較検討した結果、治療効果のモニターには2D-FLASHが優れていることが判明した。 3)MRモニター下手技として、上記の高速シークエンスの2D-FLASHを用いて転移性肝腫瘍、肝細胞癌に対し生検を施行し、手技の安全性が確認できた。 4)実際の臨床例に対するレーザー照射には、使用するアプリケーターの安全性の確認(厚生労働省未承認)が必要であり、その実証を行う必要があった。そのため、実際の転移性肝腫瘍例に対する患者に対する施行はできなかった。しかし、手技の安全性は確認されつつあり、焼灼範囲の視認性の点から治療効果に期待できる有用な治療法と考えられる。 アプリケーターの安全性が確認された後の臨床への応用が今後の課題である。
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