超高磁場多核種磁気共鳴法による脳循環代謝機能画像の開発と脳神経疾患解析への応用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670897
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 成瀬 昭二 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (50106407)
• キーワード: 磁気共鳴画像法 / 超高磁場MR装置 / 化学シフト画像 / 拡散強調画像 / 拡散テンソル画像 / 2次元NMR / functional MRI / 脳循環代謝機能

研究概要

「目的」高度の磁気共鳴(MR)技法をヒト用超超高磁場装置で実用化し、非侵襲的な脳循環代謝機能画像法を開発し脳神経疾患の病態解析に適用した。
「方法」大別して3項目の研究からなる。第一は、種々のMR技法を超高磁場下で発展させ、高精細の脳機能代謝画像法、非侵襲的な超高速脳血流画像法、神経細胞興奮伝達画像の開発、などの新技術の開発を行う。第二はこれらの基礎的検討として動物実験モデルで病態解析を行うこと。第三はこれら技術的・基礎的研究を基に臨床応用を検討すること、である。本年度は、超高磁場でのMR法による脳循環代謝機能画像の実用化の基礎検討を行った。動物実験用NMR装置(7.0T Inova,Varian)と超高磁場ヒト用MR装置(3.0T,Signa Horizon)を用いて以下の方法の実用化とその応用研究を行なった。
(1)超高磁場での化学シフト画像法の実用化:3.0T装置で^1H-MRS化学シフト画像法を実用化し、空間分解能と測定時間を短縮した。脳組織の代謝変化の詳細な画像解析が可能となった。
(2)高速3次元拡散強調画像法:拡散テンソルの情報を用いて3次元的な物質の拡散速度や方向性を示す画像を実用化した。水分子の脳組織での立体的な拡散と神経線維の方向性を解析でき、各種疾患の早期検出や組織特異性の解明に適用できるようになった。
(3)2次元NMR法の生体への適用:2次元相関MRS(COSY)の測定を検討し、従来のMRSでは不可能であった物質の検出を可能ならしめた。神経細胞に重要な各種アミノ酸や細胞膜成分の解析が可能となった。今後のMRSの新しい発展へ応用できることが明らかになった。
(4)funtional MRI(fMRI)の精度向上:超高磁場装置でfMRIの時間分解能,空間分解能を高め、データ処理法の最適化にてfMRIの信頼性の向上を図った。
「結論」高度のmulti-modality MR法を超高磁場下で駆使することにより、非侵襲的な脳循環代謝機能の画像解析が可能となり、各種の病態解析に適用できることが明らかとなった。今後次年度以降への研究課題を遂行してゆく。

研究成果

• [文献書誌] Takegami T,Naruse,S. et al.: "Mismatch between lactate and the apparent diffusion coefficient of water in progressive focal ischemia."NMR in Biomedicine. 14・2(In print). (2001)
• [文献書誌] 成瀬昭二,田中忠蔵: "新しい医療技術;Functional MRI"整形・災害外科. 44・5(印刷). (2001)
• [文献書誌] 田中忠蔵,成瀬昭二 他: "機能的画像診断 fMRI"臨床画像. 16・12. 1406-1415 (2000)
• [文献書誌] 福永雅喜,成瀬昭二 他: "機能的MRIによる補足運動野領域の活動の経時的変化に関する検討"認知神経科学. 2. 77-80 (2000)
• [文献書誌] 成瀬昭二,田中忠蔵: "診断法の原理と頭部疾患診断上の特徴。Functional MRI"クリニシャン. 47・494. 657-665 (2000)
• [文献書誌] Son B-C,Kim M-C,Choi B-G,Naruse S,Kang J-K, et al.: "Proton magnetic resonance chemical shift imaging (1H-CSI)-directed sterotactic biopsy."Acta Neurochirurugica. (In print). (2001)
• [文献書誌] 成瀬昭二,田中忠蔵: "MRI-磁場と電磁波による医療画像診断田村守(編):光が拓く生命科学 第6巻光による医学診断 第4章"共立出版. 40 (2001)
• [文献書誌] 成瀬昭二,古谷誠一,田中忠蔵: "機能的MRI;甘利俊一,外山敬介(編):脳科学大辞典"朝倉書店. 7 (2000)