腹部大動脈瘤に対するステントグラフト挿入術のイントロデューサーの径をより細くして、比較的簡便に行える留置法を成犬を用いた動物実験モデルにより検討した。両側の大腿動脈から、2本のPTFE covered Z-stentを両側腸骨動脈から大動脈内に並列に留置する方法で大動脈内の2本のステントグラフトが互いにD型に変形することで動脈瘤内への血流を遮断する。成犬6頭中5頭でPalmaz stentを用いた腹部大動脈瘤モデルの作成に成功し、その腹部大動脈径は9.9-12.1(平均10.8)mmであった。5頭全例に中枢径9mm遠位側径6mm全長8cmのテーパー型PTFE covered Z-stentの2本並列留置を試み、全例で留置に成功した。直後のDSAで全例に中枢側からのminor endoleakを認め、2週後のfollow-up DSAでも全例にステントグラフト中枢側から内腸骨動脈に流れるendoleakを認めた。これらの結果からは2本のステントグラフトが互いにD型に変形することで動脈瘤内への血流を完全に遮断できなかったことが判明した。この原因として実験モデルの内腸骨動脈分岐が大動脈分岐部にあり、瘤内からの流出血管となっていたこと、2本のステントグラフトで血流を遮断するためにはstent径/Aorta径比が0.82以上必要であったが、5頭中0.82を超える症例は2例しかなかった。本方法には十分な径のステントグラフトを使用すると共にステントグラフト中枢側の間隙を減少させるためステントグラフトの間隙に塞栓物質を注入するなどの工夫が必要であると考えられた。
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