放射線治療技術の向上によって、厳格な照射の範囲が望まれ、腫瘍の微小浸潤・転移(subclinical disease)範囲や制御線量が重要となってきた。その範囲決定には、臨床・病理的検討が必要であり、線量決定には、clonogenic cell数と放射線感受性を知る必要がある。治療可能比向上の為には、その細胞数を減らし、感受性を高める工夫が必要である。 1.臨床学的研究成果 (1)微小脳転移:MRIでは2mm径で発見されたが、4mm径では既に中心部壊死が出現した。感受性は様々だが、壊死の多い腫瘍では悪い。(2)頭頚部予防照射:舌癌の頚部リンパ節予防照射症例において、予防線量と再発率に相関関係がみられ、30Gyで30%抑制効果と予想された。Subclinical phaseの早期照射の重要性がある。化学療法併用の効果を今後明らかにする。(3)頭頚部術後照射:術後非残存例でも60%に再発があるが、20-50Gy照射で0%、ミクロ残存腫瘍では30-70Gyで16%、マクロ残存例で63%の再発率であった。リンパ節に関しては陽性例では10%、ミクロ残存例では50%の照射野内再発があった。線量・術後日数・化学療法併用との関係はなかったが、照射野の範囲とは関係した。 2.基礎的研究 SCCVII腫瘍において10^4と10^5個細胞のミクロレベルの照射効果は、前者に感受性が高かった。ルイス肺がんにおいても同様で、10^5個以上では、低酸素細胞増感剤の効果があり、その出現によると考えられた。10^5個未満では強い線量-生存率関係があり、小細胞数では少ない線量で制御可能である。しかし、ミクロレベルの細胞の倍加時間も短く、早期治療が望まれる。これらの細胞環境について病理学的観察を開始した。また、抗癌剤・血管新生抑制剤等のミクロレベルにおける効果と放射線の併用に関し現在検討中である。
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