口腔癌の術後照射の成績およびそれに関与する因子の解析を行なった。術後50Gyの照射でミクロ的残存腫瘍には効果が認められ、術後残存度とリンパ節転移例が予後に影響した。非小細胞肺癌術後照射では、3年生存66%と優れた成績が得られ、照射野内再発は10%と少なく、リンパ節転移の有無で差はみられなかった。直腸癌の術前照射+術中照射によって、治療成績の向上がみられた。20Gy術前照射後の腫瘍の縮小率は、組織学的分化度よりもP21やアポトーシスと有意に関係していた。微小脳転移例について症例を追加し、多変量解析の結果、照射3ヵ月後の消失率は、MRI上中心部壊死と診断名(肺癌>乳癌)が影響したが、再増殖は病理組織(腺癌>小細胞癌)のみで、転移サイズや中心部壊死とは統計学上有意ではなかった。中心部壊死は、転移サイズ(>4mmで出現)と診断名(肺腺癌>乳癌)に依存した。病理組織学的検討では、微小転移の段階でも壊死がみられ、同じ腺癌同士でも細胞環境に大きな違いがみられた。 基礎的研究としては、ルイス肺癌の微小転移の組織像を検討した。数個の細胞からなる顕微鏡的肺転移を多く認めたが、マクロ的転移との差はわからなかった。今後、低酸素細胞、増殖能、血管密度、アポトーシスと腫瘍細胞数の関係を観察し、微小転移の発育について検討する。微小腫瘍における細胞生物学的特長を知るために、50-300mm^3の組織型の異なる4つの腫瘍を用いて、免疫組織学的検討と放射線感受性について研究した。微小腫瘍は、組織学的には大きな腫瘍との差異は少ないが、低酸素細胞や壊死の過多は腫瘍サイズや腫瘍の発育部位(血流の違い)に依存した。微小腫瘍においても、低酸素細胞の存在は放射線治療において重要である。
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