1.臨床的研究:(1)頭頸部、子宮、肺、直腸でSubclinical diseaseやMicroscopic tumorに対して術後や術前照射の有効性が認められた。それに関与する因子は、ミクロ的に存在する細胞数に依存し、少ない線量でも効果はあることがわかった。(2)直腸癌の術前20Gy照射後の腫瘍縮小率(0〜60%)は、組織学的分化度よりもP21やアポトーシスと有意に関係していた。(3)微小脳転移に対する30Gy後の腫瘍制御について、転移サイズやMRI上の中心部壊死は統計学上有意に影響しなく、病理組織(小細胞癌>腺癌)のみ有意であった。中心部壊死は、乳癌より肺腺癌に多く、4mm以上で出現し、成長率と関係した。組織学的には、腺癌で壊死が多い場合、癌細胞数は少なく、感受性と相関しない原因かもしれない。 2.基礎的研究:(1)癌細胞移植後ミクロの時点での実験では、腫瘍細胞数と放射線効果は強く相関したが、10^5個を超えると抵抗性になり、低酸素細胞増感剤の併用で増感され、低酸素細胞の出現が考えられた。ミクロの時期の成長が速いことも伺えた。マクロの時期と比べ、RBE、線量率効果では違いは少なかった。(2)ルイス肺癌の自然発生微小転移の実験では、転移の出現は指数関数的に増加し、成長も速かった。微小転移の放射線効果は予想より低く、組織学的検討でもマクロの腫瘍と大差がなかった。今後、低酸素細胞、増殖能、血管密度、アポトーシスと腫瘍細胞数の関係を観察し、微小転移の発育について検討する。(3)微小腫瘍における細胞生物学的特長を知るために、50-300mm^3の組織型の異なる4つの腫瘍を用いた免疫組織学的検討をした。微小腫瘍は、組織学的にはマクロ腫瘍との差異は少なかったが、低酸素細胞や壊死の過多は腫瘍サイズや腫瘍の発育部位に依存した。微小腫瘍においても、低酸素細胞の存在は放射線治療において重要である。
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