研究分担者 |
長谷川 正俊 群馬大学, 医学部・放射線医学教室, 講師 (50251111)
山田 滋 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター治療・診断部, 研究員 (80311380)
辻井 博彦 放射線医学総合研究所, 重粒子治療センター治療・診断部, 研究員 (50088853)
岡 邦行 水戸済生会総合病院, 病理部, 部長 (80094241)
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研究概要 |
これまで、主にp53を中心とした細胞周期調節ネットワークに関連した蛋白の発現と放射線治療効果の解析を行ってきたが腫瘍の増殖能とそれら因子の発現に相関はあるものの強い相関では無かったので、最近明らかとなりつつある細胞増殖の抑制因子であるTGFβならびにSMADシグナルカスケードとその下流に位置するとされるp27に焦点を当てて、子宮頚癌の放射線治療における役割を遺伝子レベルと蛋白レベルで解明している。そして,p53蛋白、p21蛋白、に加えてCyclin D、p27蛋白の発現と放射線照射効果の関連を解明し、発表した(Cancer 2000,88.2766-73)。すなわち,放射線治療された子宮頚癌症例77例を対象に抗p53抗体,抗p27抗体を用いて免疫染色を行い,各遺伝子産物の陽性と放射線治療後の予後との関係を検討した.p53過剰発現群と非発現群は5年生存率がそれぞれ,62.7%,79.9%とp53の過剰発現群は非発現群に比べ予後不良であった.また,p27遺伝子産物の陽性症例ならびに陰性症例は5年生存率がそれぞれ,74.0%,49.6%と陽性症例の予後が良好であった.照射中にp53遺伝子産物の陽性頻度が上昇を認めたが,p27遺伝子産物陽性頻度は逆に低下し,両者には逆相関の傾向があった.p53遺伝子の変異についてPCR法により,エクソン5,6,7,8を同定したところ,27Gyの子宮頚癌5例中4例がp53の変異を起こしていた. これらの結果,TGFβのシグナル伝達下流のp27遺伝子発現は子宮頚癌の放射線治療後の予後に良い影響を与えることが明らかとなった.今後,このメカニズムの解明が必要である.
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