研究概要 |
本研究では、ラット四肢の電気刺激モデルを用いたfMRI法における早期応答に関する基礎的実験およびラット脳室潅流モデルを用いた脳脊髄液潅流測定実験を行い、以下の成果を得た。 これまで脳脊髄液の産生速度の測定はウサギやイヌ等の中・大型動物を用いて、色素ラベルしたデキストラン等を使ったventriculocisternal perfusion法によるものが殆どで、ラット等の小動物での測定が困難であったために、脳脊髄液産生に関する研究が少なく、生体内環境の脳脊髄液産生に及ぼす影響に関する情報は極めて限られていた。また、これらの過程を三次元的に可視化、画像化し、定量化した例はない。 本研究では、ラット脳室潅流モデルを作成し、MRI法を用いた方法で脳脊髄液潅流過程を空間的に可視化、画像化することにより、髄液産生に対する1)動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の変化の影響、2)脳室内での炭酸脱水酵素阻害の影響を検討した。 ラットの側脳室にカニューレを挿入して、8.5mMのGd-DTPAを5ul bolus injectionし、MRI法で測定した信号強度の変化より、single compartment, well-mixed modelを適用して、脳脊髄液の産生速度を求めた。(実験条件:TR100ms, TE4.2ms,1mm slice,195um x 195um in-plane resolution)。髄液でのGd-DTPAの消失速度定数は、PaCO2が40.5+/-2.1mmHgの時は0.158+/-0.011 min^<-1>であったのに対して、24.7+/-2.9mmHgの時は0.094+/-0.019min^<-1>、95.0+/-7.8mmHgの時は0.182+/-0.008min^<-1>であった。Gd-DTPA消失速度定数は、PaCO2の上昇とともに上昇したが、PaCO2が60mmHgを超えるとほぼ飽和した。また、脳室内にあらかじめ炭酸脱水素酵素の阻害剤であるacetazolamideを投与するとGd-DTPA消失速度定数は、有意に低下した(0.081+/-0.011min^<-1>)。 今回の実験により、脳脊髄液の産生速度とPaCO2の関係を明らかにすることが出来た。
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