研究概要 |
MMN(mismatch negativity)という事象関連脳電位(Event-related brain potential)は、前注意的情報処理に関連する記憶過程を反映すると考えられている。研究代表者らは、MMNが反映する聴覚性感覚記憶が時間統合機能(Temporal Window of Integration)を有する事を示した(Yabe et.al.,NeuroReport,1997)。一方、従来より精神分裂病の注意障害及び前注意的処理障害が指摘されており、MMN現象との関連性が注目されていた。研究代表者らは脳磁図(MEG)によるMMN発生源同定(Yabe et.al.,Psychophysiology,1998)に加えて、TWIの大きさを166-170msと同定した(Yabe et.al.,EEG journal,suppl.40,1999;6th IEPS:Okazaki Award受賞)。さらに、このTemporal Windowの内部の逸脱検出感度の変化を明らかにしてきた(Yabe et.al.,Cog Brain Research,in press)、TWIと音のstreaming効果との間で優位性を検討した(Yabe et.al.,Brain Research Interactive,in press)が、この成果は、ICON-7(June27-July3,1999,Budapest)のシンポジウムで公表された。また篠崎らと共にMMNで明らかにされるような音のgroupingに関連する研究を行ってきた(Shinozaki et.al.,NeuroReport,2000)。一方でERP計測に有効な脳波分析法としてmedian methodを開発した(Yabe,Electroencephr.Clin.Neurophysiol.,1993)が、この方法が潜時jitteringにも有用である事を確認し、報告した(Yabe,BRMIC,1998)。また、篠崎らとsomatosensory modalityでのMMN相当成分を同定した(Shinozaki et.al.,Cog.Brain Research,1998)。佐藤らと共に精神分裂病患者における薬物の覚醒レベルに対する影響を明らかにした(Sato et.al.,Schizophrenia Research,1999)。以上の結果を踏まえて、精神分裂病患者のMMNの背景にある感覚記憶の時間統合機能の検討を行った。その結果、精神分裂病患者におけるMMN振幅減衰という一元的な所見だけでなく、MMNの基盤にある感覚記憶の時間統合機能障害が存在する可能性を示唆した。この結果については、MMN2000(Barcerona,15-18 June,2000)のシンポジウムで公表された。一方では、言語性MMNに関連する研究を小山らと開始した(Koyama et al.,Cog.Brain Research,2000;Koyama et al.,NeuroReport,2000)。以上、3月後半には、言語性MMNを指標として精神分裂病患者における言語性幻聴を探る手法・条件が整う予定である。今後2年間で、研究を推進していく予定である。 従って、現時点において本研究独自の成果の公表はできない。
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