研究課題/領域番号 |
12670924
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 利人 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (10196850)
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研究分担者 |
馬場 淳臣 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (80292556)
堀 孝文 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (40241822)
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キーワード | Drug abuse / Cocaine / Receptor subunit / NMDA receptor / in situ hybridization |
研究概要 |
コカインは急性および慢性投与により幻覚妄想状態が惹起されることが知られている。とくに慢性状態では精神分裂病に類似の精神症状が出現することが指摘されており、動物においてコカインを慢性投与され行動感作が出現した状態における脳内神経伝達物質の変化は分裂病の病態を検討する上で注目されている。一方、生化学的にはドパミンなどのモノアミン受容体の異常が指摘されているが、近年アミノ酸受容体の関与も報告されている。そこで我々はラット(SD系雄性)にコカインを2週間慢性投与(1日1回腹腔内投与)し行動感作が出現したラットにおいて、精神分裂病動物モデルとして想定し脳内アミノ酸、とくにイオンチャネル型グルタミン酸受容体サブユニット(NR1,2A〜2C subunits)mRNA量の変化を検討した。 SD系雄性ラットにcocaine HCl(20mg/kg)を腹腔内投与した。急性投与群は、投与1時間後に断頭した。慢性投与群は、14日間の1日1回連日投与終了後1日後に断頭した。受容体subunit mRNA量は、in situ hybridization法によりNR1、2A〜2C subunit mRNA量の変化を検討した。定量的解析には、storage phosphor imaging法によるBAS5000((株)富士フイルム、東京)を用いた。測定は大脳皮質や海馬、視床、下丘、小脳で行った。 その結果、コカインの急性投与1時間後に海馬においてNR1 subunit mRNA量が増加した。慢性投与ラットにおいてはNR1 subunit mRNA量は線条体、辺縁系、大脳皮質において減少し、海馬で増加していた。NR2 subunit mRNA量は線条体と皮質において減少していた。一方、NR2Aおよび2C subunit mRNA量はいずれの脳領域においても変化を認めなかった。以上のことから、急性投与においてはmRNAの代謝回転がNR1 subunitにおいてのみ海馬で変化していると考えられ、これは海馬で観察されるneurogenesisという現象に関与している可能性が指摘された。次に慢性投与においては行動感作にNR1およびNR2B subunitが関与していると考えられた。今後これらの以上の意義について他の精神異常惹起物質を用いて比較検討する必要がある。
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