X染色体上の行動関連遺伝子であるGRPR遺伝子については、この遺伝子内で切断された転座をもつ自閉症例が報告されていること、自閉症を合併するRett症候群がマッピングされた領域の近傍に位置しており、Rett症候群でGRPR遺伝子にいくつかの変異がある可能性が報告されていること、X染色体上に存在していて性差が説明しやすいこと、GRPRが脳内に発現しており行動や代謝などの生理学的作用があることから、GRPR遺伝子をノックアウトしたマウスで多動、孤立、集団内での他害行動などの行動症状が出現すると報告されていることなどから、自閉症の発症に関与する可能性がある。これまでに、本人ないし家族から同意を得た自閉症患者約80名から採血を行い、DNAの抽出と、リンパ球の分離と株化を行った。得られたDNAについて、X染色体上の行動関連遺伝子であるGRPR遺伝子のエクソン領域について、300bp程度に分割してにPCR法で増幅し、SSCP法によるSNPsなどの変異の検索をおこなった。現在までのところ、SSCPのバッファの泳動温度をいくつかに振ってみても変異は見いだされていない。さらに、既に報告されているSNPsについても検出ができなかった。そのため、この結果について検討し直すために、既知のSNPsのある領域について、シークエンシングを行って確認を行っているところである。また、GRPRとは別の行動関連遺伝子についても検索を行っている。
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