我々は、躁うつ病の新規感受性遺伝子として、染色体21番のPFKL近傍に存在する3つの遺伝子(SYNJ1・PDE9A・TRPC7)に注目している。 SYNJ1(synaptojanin1:McPherson PS et al. 1996)は、炭酸リチウムの代謝に関与するイノシトール-5-ポスファターゼを合成し、シナプス小胞の機能の調整に関与している。PDE9A(phosphodiesterase9A : Guipponi et al. 1998)は、cyclic nucleotidesの細胞内濃度を調整し、シグナル情報伝達に関与している。我々は、SSCP(single strand conformation analysis)法あるいはダイレクトシーケンス法にてこの2つの遺伝子の変異・多型解析を精力的に行っている。 TRPC7(Nagamine K et al. 1998)はカルシウムチャンネル蛋白遺伝子であり、躁うつ病患者で異常が報告されているカルシウムチャンネルに関連していることから疾患の感受性遺伝子としての可能性が高いと考えている。これまでに、SSCP法あるいはダイレクトシーケンス法にて翻訳領域に7カ所(5カ所にある変異はアミノ酸の変化を伴うミスセンス変異である)、非翻訳領域に21カ所の一塩基置換(SNP_s)を見いだした。現在、得られた多型のうち、制限酵素が存在する15カ所(翻訳領域の7カ所を含む)について双極性障害患者と正常対照者における頻度を比較し、ハプロタイプ解析などの手法を用いて、躁うつ病との関連を検討している。
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