研究概要 |
アルツハイマー病をはじめとする痴呆性疾患においては,認知機能障害に加えてBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)として表現される行動異常や精神症状がみられることがほとんどである. 本研究では,研究の3年間を通じて,BPSを呈する,軽症から重症の60人のアルツハイマー病患者を対象として,これらの症候に対するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の効果と,セロトニン・ドーパミン拮抗薬を併用した場合の効果とを比較検討する.また同時に,BPSの改善が,(1)患者の認知機能障害の程度と関連するのか,(2)PETによる局所脳糖代謝率の変化と関連するかを検討する. 対象はNINCDS ADRDAの診断基準でPossible ADあるいはProbable ADをみたす外来通院中のアルツハイマー病患者のうち,信頼できる介護者と同居し,80歳以下で,BPSを呈し,本研究実施に書面同意した患者である. 本年度はPossible ADあるいはProbable ADをみたし,信頼できる介護者と同居し,80歳以下の外来通院中のアルツハイマー病患者は63人であった.このうちBPSを呈した患者の詳細の分析は未実施であるが,その治療として予定したセロトニン・ドーパミン拮抗薬はほとんど使用されておらず,かつ予定した局所脳糖代謝率測定は諸般の事情によりほとんど実施されていない.ただし,そのかわりに99mTcHM-PAO SPECT脳血流検査がほとんど全例に実施されている. このような本年度の研究状況を考慮し,次年度は治療薬の偏りを減らして臨床データの収集を続ける予定である.また局所脳糖代謝率測定にかわり,引き続き局所脳血流分布測定をおこなう予定である.
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