研究概要 |
1年目(平成12年度)に腹側海馬の間欠的電気刺激による発作重積モデルを作成し、重積後の海馬に長期持続性のけいれん準備状態が亢進していることを示した。しかし、刺激部位そのものの非特異的な興奮性増強である可能性も残るため、平成13年度では深部梨状葉皮質(deep prepiriform cortex, DPC)を刺戟焦点とする発作重積モデルを作成し、海馬に長期持続性のけいれん準備状態が成立するかどうかを検討した。SDラットの左DPCおよび左腹側海馬に麻酔下で慢性深部電極を挿入し、刺戟群(S群、N=6)と対照群(C群、N=6)に分けた。S群ではaminophylline 30 mg/kgを腹腔内投与し、30分後に20Hz, 20秒、双極矩形波の刺戟を1分毎に最大100回DPCに与え発作重積を惹起させた。C群はaminophyllineの投与のみとした。刺戟後2, 8週間の時点において腹側海馬へ再刺激(重積刺戟と同じパラメーターで10回のみ)を与え、その反応を観察した。 重積刺戟ではS群の全てに強い自発性けいれん活動が認められ、発作重積に至った。C群では脳波、行動上の変化は見られなかった。海馬再刺激に対する反応では、C群に対しS群で海馬からの後発射持続時間およぴ発作段階が2,8週後ともに有意に増強していた。このことから、海馬外の辺縁系組織であるDPCを焦点とする発作重積の後においても、梅馬に長期持続性のけいれん準備状態、いわゆるdelayed kindling effectが形成されることが示された。なお予備的実験で8週後のAMPA受容体の減少や細胞変性を海馬に認めたものの結果は未だ不充分であるため、現在重積後16週までの脳波・行動の観察および組織像を得る実験を行っている。これら一連の実験により本モデルの特徴を明らかにし、さらに免疫組織化学法を使った興奮性アミノ酸受容体や前シナプス蛋白などの変化について検討を加える予定である。
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