側頭葉てんかんの動物モデルとして、てんかん発作重積を起こして一定期間の後てんかん原性が新たに海馬などに獲得されるものが種々あるが、薬物投与によるモデル、電気刺激によるモデルいずれもそれぞれ問題点がある。今回我々は、てんかん発作終焉機序において重要な役割を持つとされる、adenosine受容体拮抗薬であるaminophyllineを、それ自体ではなんらてんかん性活動を惹起しない用量で前投与したラットを用い、海馬またはDPCにmassed stimulationを与えたところ、極めて効率的に発作重積を招来することができた。海馬焦点ではaminophylline前投与の有無は大きな差異を生み出さなかったが、発作重積そのものが弱く、一方DPC焦点ではaminophylline前投与で発作重積は100%の動物に起こり、かつ長時間の重積を招来した。また、DPC焦点の発作重積後、2および8週問の時点で腹側海馬に入れた深部電極から重積時と同様のプロトコールで10回のみ刺激するテスト刺激を与えると、時間が経つにつれて刺激に対しての発作段階の強さや、後発射持続時間が対照群より有意に延長し、海馬においてけいれん準備状態が長期的に亢進していることがわかった。さらにDPC焦点重積ラットの重積後16週まで脳波上、発作間欠期放電あるいはてんかん性活動が認められた。このラットは両側の海馬において萎縮と細胞脱落がみられ、側頭葉てんかんに合致する所見が得られた。これらの結果から、aminophylline前投与下にDPCにmassed stimulationを与える発作重積モデルが、短い刺激時間できわめて効率良く発作重積を起こし、かつ長期的には側頭葉てんかん発症機序を良く模倣するモデルであることが示された。
|