βアミロイドの凝集抑制効果が報告されている物質について、βアミロイドの細胞毒性発現の抑制効果をPC12細胞を用いたMTT法で解析を行った。βアミロイド以外にアルツハイマー病老人斑に共存する老人斑関連タンパク質のうち、ラミニン、ミッドカイン、αマクログロブリンに関して検討した。前記の3者は全て、βアミロイドの凝集抑制効果があることが電子顕微鏡的観察及びチオフラビンTによる蛍光法により、既報の通り再確認されたが、一方でラミニンはβアミロイドの細胞毒性に影響を与えず、ミッドカイン及びαマクログロブリンはβアミロイドの細胞毒性抑制効果があることが今回示された。これらの結果よりβアミロイドの線維形成と細胞毒性とが、必ずしもリンクしないことが示唆された。以上の結果はいくつかのアルツハイマー病トランスジェニックマウスで最近報告されている老人斑形成を伴わない神経細胞の変性と関連する事柄と考えられた。βアミロイドによるcell freeの状態下でのfree radical発生に関してはいくつかの報告がなされてきたが、最近の報告でそのことが疑問視されている。われわれは、これまでの報告を詳細に検討した上で実験を行い、βアミロイドによるcell freeの条件下でのfree radical発生は確かにありうるが、それは溶媒の種類によって強く影響を受けることを明らかにした。すなわち溶媒の種類によってβアミロイドの凝集の程度が変化し、そのことがfree radical発生に直接影響することがわかった。結論として、これまでの報告のβアミロイドのfree radical発生の有無に関する矛盾は使用した溶媒の差異による可能性が示唆された。
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