研究概要 |
精神分裂病者における手指巧繊運動の習熟過程の障害に関する研究においては,分裂病者の達成運動課題は一週間の練習前、後ともに健常者に比べて低いが、達成運動課題の改善率は両者で差がないことがわかった。また、健常者では習熟過程によって運動前野の賦活の程度が有意に減少するが,精神分裂病者では反対に上昇することを報告した。この結果に基づき,SPM96を用いて同様の研究を行ったところ健常者においては運動野、運動前野、補足運動野、基底核、小脳など、すべての領域で賦活の程度が低下することがわかった。特に、補足運動野、対側運動野、対側小脳においてはほとんど賦活がみられなくなった。これに対して、分裂病者では特に運動前野や補足運動野の賦活領域が拡大する傾向があった。 また、神経心理検査(Conceptual Reasoning Task)による賦活パターンの違いに関する研究では、functional MRIを施行した被験者は現在健常者54名以上,患者15名である。健常者における統計処理の結果では女性は男性に比べて少ない賦活領域で課題を処理できること(正答率には差がない)が判明した。また,精神分裂病者では課題の正答率は健常者に比べて若干低い程度であるにもかかわらず、賦活領域の減少、特にワーキングメモリーに関与する前頭前野および頭頂葉における賦活領域の減少が目立っていた。
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